アップル、グーグル、マイクロソフト: クラウド、携帯端末戦争のゆくえ

賞味期限付きの本です。代表的なネット企業戦略を語る本はすぐに内容が陳腐化してしまいますので,読むなら早めに読みましょう。また,本書はクラウドって結局なんなの?という疑問をもつ人,そしてアップル,グーグル,マイクロソフトって同じネット企業でしょ?似たようなサービスばっかり出してパイを食い合ってるだけじゃん!と思っている人がサラッと読んでみると良いかもしれません。いや,パイを食い合っている事には変わりはないかもしれませんが,全く立場が異なるという事を意識出来るかもしれません。
本書ではタイトルとなっているアップル,グーグル,マイクロソフトクラウドや携帯戦略を中心に比較し,それぞれの企業が全く異なる立場から攻めこむ姿を描いている。グーグルとアップルの強さが少し強調されているようにも感じるけれども,残念だと思ったのは一番最後の章で日本の姿と,今後日本がどのような戦略を取るべきかという部分。とても学者らしいというか,日本を悲観的に見すぎているところがあるとおもう。まぁ楽観視出来る状況なのか?と言われれば,そうではないと答えざるを得ないけれど,日本という大枠で見すぎていて海外の流れに全くついていけていない,むしろ保守的な方向に進んでいるのではないか?とさえ感じる主張,そしてアップル,グーグル等がルールブレイカーと評されている点に違和感を感じざるを得ない。
日本に目立つ企業が無いという事が,そういう主義主張に結びついているのだろう。そしてアップルやグーグルのような巨大企業でありながら,世界全体に影響を及ぼすような力がある事,その事実に驚かされるばかりであることも確かだ。ただ,だからといって日本の短所と思われる部分を"生かした"戦略をとることを勧めて結局どこへ向かうのだろうか。世界に通じる企業が出来上がるという結果が待ち受けているような話も書かれていないのだ。観察的な視点,それも日本全体という大きなものを見ることも大事だが,もう少しミクロな視点も取り入れて提案や新しい視点の提供をして欲しかった。これでは趣味本のような状態ではないかと感じる。