モバイル・コンピューティング

IT系の本は賞味期限が短いのですが、本書は2011年春の今がちょうど切れるタイミングかもしれません。内容は若干古く感じますが、2010年に2011年を書いたような予測部分があるので、その点での評価です。

さて。IT系でも技術的な本以外は結構サラッと読めてしまうのですが、同時に色んなアイディアや視点が生まれるから面白いです。本書を呼んでいても、色んな考えが頭をよぎり、結局読むのに丸一日かけてしまいました。

いくつか面白いと思った点をまとめてみると、まずはGUIの次のコンピューティングはABCであるという部分です。ABCとはActivity Based Computingの略ですが、要するにタスクの流れる順番でアプリケーションがスムーズに入れ替わるようなものです。
本書ではこれは音声検索とAI技術の台頭ではないかという論調ですが、私自身、それに加えて、アプリケーションがそれぞれ独立している存在ではなく、スムーズに遷移できる、いわばAndroidのIntentのような機能を想像しました。これは結構大事な考え方で、アプリケーションを意識することなくタブで複数のアプリが起動するとすれば、これほどスムーズなことはありません。Firefox4ではタブをグループ分けすることができますが、この機能も追加して、何かをするために必要なアプリケーションをグループ化し、起動・終了を管理できれば仕事だけでなくプライベートでも、作業がとてもスムーズになることでしょう。
また、音声検索に関しても長期に渡る研究成果が現在、いろんな場所で出ていますが、入力音声を文字化し、形態素解析を行うことが出来、かつネットに接続している環境であれば、一部擬似的にAI的な、入力音声に対して追加で機械側が質問をして、答えることでand検索を行うことができるのではないかとも思います。OR検索はさすがに難しいかなと感じますが。。。音声検索でネット接続環境を必要条件として述べたのには、検索するためという事以外に、Google Instanceの存在を意識しています。入力音声を形態素解析しながらバックグラウンドで検索し、回答に近いものがヒットしない場合、追加で機械側から質問を返すという流れも踏めるのではないかと考えたからです。2011年にGoogleは検索アルゴリズムを500、変更するといわれていますが、精度が高くなればなるほど現実味が増してきます。

日本の携帯電話販売における販売奨励金についても本書で書かれていますが、少し考えたのは、販売奨励金がなくなったことによって端末にお金をかければ良いという端末メーカー側の思考はなくなったので、Androidのような安価に利用出来るものを積極的に利用する流れとなる。つまり、海外の流れを大きく受けるようになるということです。おサイフケータイNFCについてもある程度道筋が出来ることになると思いますが、今まで以上に海外の情報と自分たちが持っている情報を組み合わせて、何か新しいことが出来ないか、常に考えることが必要になるのでしょう。

本書とは関係有りませんが、ここで本書を読みながら考えたアイディアをいくつか書いておきます。(すでに存在するかもしれませんが。)
1.ARを利用して、「この店で待ち合わせよう!」みたいなものを実現すること。
⇒カメラで店舗を捉えれば、その店の情報が表示され、その画面内でチェックイン&招待が出来るような物を想像しています。自動的に該当店舗専用のタグを付けてあげて、店側でもわかるようにして、Googleの店舗詳細画面でもストリーミングで見れるようになると面白いです。

2.バーコードとARを組み合わせて、バーコードをカメラで捉えると、それに対する評価やクチコミ、コメントやブログへのリンク等が、表示されるサービスというのはいかがでしょう?東のエデン的な。

3.敢えてその場でモノが買えない、商品を1点限り並べるAmazonの実店舗バージョンというのはどうでしょう?
⇒買うのはAmazon等のネットショップだけれども、触れる、見れる、感じられるという五感を重視した店舗です。
商品をその場でいじることが出来れば、さらに面白いし、バーコードを利用してクチコミがわかると面白い。お店に入る時に、情報を見るための端末の貸し出しがされていたり。システムの発注先はAmazonじゃなくてもいいけど、お急ぎ便対応が出来ると良い。

と、特に本書と関係ないものですが、ネット系の本の面白さは、こういう部分にあると思っています。

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