【Forsight】「経済学はやっぱり面白い」から考える人の行動と目標設定

Forsight誌を読んでいるとたまに付いてくるセミナーCD。
今回は大阪大学大竹文雄氏。行動経済学分野の方だけれどもとても興味が惹かれた。行動経済学。。。というより経済学分野の時間割引の考え方って,結局は自分の目標設定や,なぜ実際に行動が起こせないのかを考える事と共通しているように思うからだ。
大竹さんがそれを意識して話をしていたかどうかはわからないが,時間割引の説明として,いくつかの言葉に言い換えて説明している。

  • 現在と将来の満足を比較する指標
  • 今の満足に比べて将来の満足をどれくらい差し引いて考えるか。
  • お金を要求する際の利子率。(今日の1万と1年後の1万1千円との比較等)
つまり,現在の10000円と1年後の10100円を比較して,1年後の10100円を選択する人は時間割引率の低い人と言えるかもしれない。――現実的には銀行の預金やら自分の資産ポートフォリオと照らし合わせて考えるべきだと思うが――また,時間割引率の低い人はその行動から忍耐強い性格とされる。
そのほか,行動経済学の研究より一般的に人は将来に対しては忍耐強く,近い将来に対してはせっかちになる傾向があるとされているようだ。それは自分の今までの行動を思い返しても言えることだ。大竹さんのたとえ話では学生の頃の夏休みの宿題について話が展開されている。夏休みが始まるまでは宿題の計画を長期的にたてて,それが現実的で可能なものだと踏む。しかし現実には時間不整合問題,自信過剰が相成って,夏休みの終了直前になって一生懸命宿題をやるハメになるというのだ。つまり,夏休み前という時点では合理的であった計画が自信過剰により計画が先延ばしされ,いざ実行へ移そうとした段階では,既にその計画は全く実情に合わず,計画の変更を余儀なくされ,結局夏休み終了間際になって無理矢理ひねり出された計画にのっとり睡眠時間を削って宿題を終わらせるという方向へ進まざるを得なくなる。。。というものだ。
これは別に学生だけにある話ではなくて社会人になってからも存在する。これを防ぐための方法として大竹さんは「コミットメント」をあげている。ただし,それも含めて,以下の要因で防ぐことが可能だと思う。
  • コミットメント
  • 内発・外発的動機付け
  • フィードバック
もちろん他の方法も沢山あると思うけれども,主に上記のようなものだろう。「コミットメント」は簡単に言うと自分への義務づけだ。その義務づけが習慣化することが望ましい。その行動は自分のやることを強制するものであり,ついやってしまう好きなことを遠ざける事だ。また「内発・外発的動機付け」は「コミットメント」と重なる部分があるが,その行動を起こすための理由付けを内発または外発的なものにより動機づけることだ。つまり,自分の目標や夢を心の中で描くことにより行動を起こせば内発的。金銭的なものや自分への褒美を理由に行動を起こせば外発的な動機づけとなる。最後に「フィードバック」と入れたが,個人的にはこの「フィードバック」がかなり重要だと思っている。教育分野では小学生などの低学年にとって特に重要とされていると考えているが,テストや小さな確認テストのようなものの結果を出来るだけ早くフィードバック出来れば出来るほど,それが次の行動へ結びつき動機づけとして強く働くと思う。子供に限らず大人にとっても自分が勉強したことに対し,その結果が早く現実のものとして現れれば現れるほど喜びを感じたり,充実感を感じると思う。それが次の行動を生み出すと思われるため,個人的には「フィードバック」がとても重要な一要因となり得ると考えている。
ここまで考えても,実際の目標設定や行動に対し,それほどぱっと思いつくアイディアはないのだけれども,少なくとも1週間後や2週間後を目標として無理な計画を立てる人は時間割引率の高い人であり,その計画を達成出来ない事による挫折等のストレスを感じるハメになるのだろう。だから,長期的な目標は時間割引率を高く,短期的な目標は時間割引率を低くする必要がある。
また,もっと短期間の1日のうちの時間の使い方に関してはどちらの考えに立つべきだろうか。個人的には1日の計画を考える上では時間割引率の高い考え方をする。つまり当日に出来ることを沢山見積もってしまう。そして結局,時間不整合と自信過剰によって当日やりたい事が全て終わらない。結局残業してしまったり。。。という悪循環に陥っているような気がする。
時間不整合の問題は結局のところ防ぐことが出来ないように感じる。解決するためには逆に考えればよいとするならば,1日の計画は時間割引率を低くすることだ。1日の時間割引率を低くするためにはその仕事のデッドラインを100%として適度にマイルストーンを設け,1日の作業量を減らすことだ。もちろんデッドラインがそもそも近くに設定されてしまっていることもあるから,それが全てではないが。

<まとめ>
●デッドラインのあるもの:なるべく細かい目標設定をしつつ,1日の作業を減らすように努める。
●デッドラインのないもの
・半年〜1年後の目標設定:時間割引率を高く設定する。
(・1ヶ月〜半年後の目標設定:時間割引率を高めに設定する。)
・1週間後の目標設定:時間割引率を低く設定する。
・1日の目標設定:時間割引率を低く設定する。
※1ヶ月〜半年後あたりは,結構人により分かれるような気がする。自分に合った計画を。

<追記>
自信過剰な面は時間に対するものと,目標に対するものとがある。1日の目標がとてもこなすことが出来ないような無謀なものになっているならば,時間と目標の両者に対し自信過剰となっていることに気づくべき。