さらば「受験の国」 高校生ニュージーランド留学記

1988年生まれの著者が語るニュージーランドでの交換留学体験。海外の教育と日本の教育の違いは様々な本で書かれており,特段ニュージーランドだからという話ではないと思うし,どの国の教育が一番とか,そういう話でもない。しかし,やはり見るべきは生徒が積極的に物事を調べたり,自分の意見を持ってはっきりと意志を表明し,議論をすることは重要だと思う。本書に出てくるように,学生といえども積極的に社会と関わりを持ち,政治ひいては国連へのアプローチを行っていくというのも非常におもしろい。
本書は非常に一面的な内容しか書かれていない。実際に留学中に著者が体験したことが書かれているだけなので,しょうがないとは思うが,学生生活の場面場面は見えてもニュージーランドそのものが見えてこない。また,ある事象に賛成であろうが反対であろうが,事前にどちらの意見や論理は見ておく必要がある。その上で最終的な自分の意見を持たなければ,ただ自分の考えを押し通す人になりかねない。
集団を動かすとき,その行動の根拠が論理的であればあるほど良いが,前提が誤っている場合,集団をすべて誤った方向へ動かす。それを起こさないためには自分の考えをも疑ってかかるべきだ。
本書で何か解決策や日本の教育について考察はされていない。あくまでニュージーランドの教育が良いということを強調され,かつ興味を持った方が気軽にニュージーランドで教育を受けることが出来るように情報提供を行っているまでである。その点で物足りなさを感じるかもしれないが,ニュージーランドの教育を少し垣間見ることで,日本の不足点,自分の不足点を見つけてもらえれば良い。