ウェブ人間論


ウェブ人間論



ウェブ人間論

  • 作者: 梅田 望夫 (著), 平野 啓一郎 (著)
  • 出版社・メーカー:新潮社

あとがきに書かれているが、この本のタイトル“ウェブ人間論”は、“ウェブ”と“人間”なのか“ウェブ人間”なのだろうかと思いながら読んでいた。
本書を読み感じたことは、ウェブを利用して成長する人とウェブという世界は知っている程度の人の成長。そんな対峙や、ウェブという世界からリアルに影響を及ぼそうとしている人物とその考えを懐疑的に考えている人物との対峙。そんな印象をもった。
ただ、2人は対談で全く違う立場をとっているようには見えないが、自分の現在の立場からの発言であることが、非常に感じられる。例えば梅田さんはウェブ進化論を始め、ウェブの世界で生き、リアルの世界にも影響を及ぼすだろうとする考え方であるが、平野さんは文学者としてウェブの世界を見つめ、現在のAmazonの“なか見!検索”やオープンソース文化など、ウェブで起きている現象にやや恐怖を覚える。
それが文学の世界にどのような影響を及ぼすのか?それが自分の生活にどのような影響を及ぼすのか?それが重要である。
たしかに平野さんの話すことももっともだ。現在、電子ブックというのは何か味気なく、画面を見ているとつかれてきそう。ページ数もわからず、何か闇雲に読むという印象があるが、このディスプレイ技術がさらに発展し読んでも疲れないことや、コントラストなども適度になれば、すべての本が電子ブックでもよいかもしれない。

iTunesNapsterが出てきて、CDを買うことが全くなくなったが、電子データのため自宅の部屋の場所も取られず、非常に有用なサービスとしてとらえている。

この発展し続けているウェブ世界に両者は敬意を表し、その力を利用せんとすることは両者とも変わらないはずだ。平野さんは過去の体験から、現在もあまり良いウェブとの付き合い方をしているわけではないのかもしれない。また、平野さんの文学や著作権という問題に関しては梅田さんと完全に対立しているような構造に見えるが、まだこの部分はウェブ上でも多いに揺れているので、今後の流れを注視したい。

うまくウェブを活用し、その流れに身を任せ、新しいサービスに目を向けて生活していきたいと感じた次第である。