金融商品と金融サービス−マーケティング

少し長い文章を書いてみました。

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人がお金を銀行や郵便局、証券会社等へ預けるとき、その行動を促す原因とはいったい何なのだろうか。

一つには、お金を持ち歩く事へのリスク、二つ目にはどこでも(Anywhere)引き出せる安心感、三つ目にはお金を眠らせておくのではなく働かせる事ができるという特徴が主な要因となっていると考えられる。しかし、お金を預けることだけではなく、お金を働かせる事を考える際に委託手数料などの諸費用が発生する。これが金融商品、および金融サービスにおけるプライスだろう。プライス、つまりコストが発生するため、金融商品や金融サービスを利用する場合、それを上回る利益を享受したいという思い、もしくはそれを上回る利益が出るという確信を持っているからであろう。一方、金融事業を行う企業にとっては金融商品、金融サービスを利用していただく事、およびお金を預けていただく事が重要な課題となる。給与の振込み口座となっていれば、そこから金融商品を購入するなど、商品のアピールを行うメリットが大きい。また、公共料金等の引落口座となれば、利用する主たる銀行となりうる。金融事業において、現在、金融システムの開発、効率化などが進み、各社がこぞってITへ投資を行っている状態であるが、委託手数料等の諸経費が収入源となっていることには変わりはない。もちろん金融機関自身が投資をするなどにより投資収益をあげているだろうが、顧客からの諸経費等がその原資の一部とはなっているだろう。

金融の分野に属する会社は非常に多い。銀行ではATMの手数料を無料としたり、振込み手数料を無料とするなど、通常の普通預金に対してのサービスも充実している。証券業界では一部で手数料をめぐり競争が激化している。エブリデイ・ロー・プライシングを実現した場合、企業の収益が減少する事が考えられるため、顧客の数を増やす事により解消させるか、ブルーオーシャン市場を新たに開拓し、他社参入の前に利益を享受する等の方法がある。

エブリデイ・ロー・プライスが直接の原因ではないと思うが、皮肉な事にエブリデイ・ロー・プライシングを実行している米ウォルマートでは労働問題や、労働者の賃金問題へと発展している。企業側がエブリデイ・ロー・プライシングを実施する場合、価格・諸費用が安定的になるが、一度下げた価格は当然あげにくくなるため価格の柔軟性がなくなる。そのため、人件費へと費用を転化するという事が起きないとは限らない。今回のウォルマートの訴訟等に関しても、詳細はわからないのだが、同様の事が社内で起きていたのではないかと考えられる。

また、リアル店舗では競合と呼ばれる同業種の会社の価格と比較し、価格を下げるという競争が起こるが、インターネットでの事業を行う事となれば競争相手は複数存在し、情報は早く回るため、価格の競争のみでは太刀打ちの出来ない世界となっている。もちろん顧客数を増加させた企業が他の企業より手数料等の諸経費を落とす事は可能であり、他の企業より多くの顧客を獲得する事は可能かもしれないが、他の商品にて収益をあげることによってカバーする事ができるかもしれない。他の会社が別の商品を扱えば、自社でも扱いという行動を繰り返す事は顧客となる対象(母集団)を広げる事となり、メリットもあるが、宣伝の方法やホームページの見せ方によっては、商品を広げたが顧客が少ないという状態に陥りかねない。情報が重要となるインターネットでは、小さなことでも告知を行っていく事が重要となる。大した内容ではなくても、興味を抱く人がいたり、他の分野に役立てて行こうと考える人がいたり、その人のたてている計画に合致するなどで、新たな顧客の創出に役立つ可能性がある。

このことから、顧客におけるコストを低額に保つ、つまりエブリデイ・ロー・プライシング戦略を行うメリットは非常に少ない。金融分野では特に新しい金融商品の創出に力が入れられており、金融工学の考え方が非常に重要であると考える。そのため、1商品でのハイ・ロー・プライシング戦略ではなく、薄利な商品か否かを分け、ブルーオーシャン事業、ブルーオーシャン分野の拡張を行っていくという方針が最も重要となるだろう。それは、エブリデイ・ロー・プライスにした場合、他社に抜かれない下限を設けなければならないことが必要となるが、金融市場や社会状況等によるリスクを会社が逃れられなくなるという事態を防ぐためにも重要だと考える。